Ⅰ
先日あるファッションブランドさんと打ち合わせをしていました。
このブランドさんは今季が3シーズン目で、ようやく丸一年回ったところ。
売上的には6,000万円程度で利益的にも300万程出ているそうなので、利益率が5%程といったところでしょうか。
さて、損益計算書上ではこれだけの情報だと黒字ですね。
「わぁ!すごいじゃないですか!一年目から黒字なんて!」って言ってあげたいところですが、そんな事言ったら色んな賢い人たちから「お前なんもわかってねーな」って言われそうなので、黙っておきます。
そんなもやもやした気持ちをその場では押し殺し、とりあえずtwitterで呟いときました。
アパレルではPLが黒字化するなんて大した意味ないとか言っちゃったら、怒られちゃいそうですね(誰にだよ?)
II
そもそもなんでこんなこと言ってんだろうってなりますよね。(根本的になんでこんな話してるんだろうって事じゃないよ)
黒字倒産する理由ってだいたいが利益があるけど、キャッシュ(現金)がない!って状態なんです。(もちろん他にもあるでしょうけど)
例えば
- 1点1千円の商品を100個仕入れました。
- 仕入れた商品のうち40個を2千円で売りました(今流行りの原価50%です)
- 仕入れ代金10万円を支払いました。
- 売上代金8万円を受け取りました。
損益計算書 ( PL計算書 ) はこうなります。
売上高 = 2千円 × 40 = 8万円
売上原価 = 1千円 × 40 = 4万円
粗利= 純売上8万円 - 製造原価4万円 = 4万円
粗利が4万円、やりましたね!黒字です!
これが冒頭のブランドさんが言っている状態です。
Ⅲ
ちょっと待ってください。
じゃぁいいじゃんって思ったかもしれませんが、勘がいい方はお気づきかもしれませんが、実際のお金の流れって全然違いますよね。
実際のお金の流れを表す、キャッシュフロー計算書 ( CF計算書 )でさっきの状況を見てみると
営業収入 = 2千円 × 40 = 8万円
商品仕入支出 = 1千円 × 100 = 10万円
現金の増減額 = 営業収入8万円 - 商品仕入れ支出10万円 = ▲2万円
あれ?PL上では利益が4万円出ているのに、現金は2万円もマイナスです。
それは利益を計算する為であるPL計算書では、仕入れ商品(在庫)が売れない限り売上原価にはならないからです。
でも、現金の増減を計算するCF計算書だと、仕入れた商品が売れてなくても仕入れ代金を支払えば商品仕入支出になるのです。
Ⅳ
利益の計算と現金収支は計算書の見方が違うし、実際にはこれに入金サイクルも加わります。
入金サイクルはクレジットカードをイメージしてもらえればいいかと思いますが、その月に使った分はまとめて翌月の指定された日に払う事が一般的です。
これは売上に対しても同じで、信用取引とか、締め支払いとか言ったりもします。
別に全ての支払いとかがこれなら問題ないんですけど、例えば
「あなたの会社、まだあんまり知らないからお金もらってからじゃないと仕事しない」
みたいな事や
「ウチもお金を先にもらわないと仕入れができないから先に頂戴」
なんて事もよくあります。
すると、今お金を使ってるのに売上金が入るのは何ヶ月も先となります。
こんな風に入出金のバランスが良くない状態が続いちゃうと、会社の現金が底をついてしまう事になり黒字倒産となります。
Ⅴ
「勘定あっても銭足らず」って古い言葉があるんですけど、黒字倒産ってまさにそういう状態なんですよね。
飲食とかって仕入れの支払いよりも先に売上の収入が早かったりするんですけど、アパレルだと中々そういうわけにもいかないですね。
卸取引とかで、メーカーから商品が届いて、それが締め支払いで、入金日よりも先に売れば同じ理屈になりますけど。
とにかくまとめると
「利益よりも現金を大切に」ってところです。
それではまた。