ファッションの科学 #019 LTV(生涯価値の計測)

こんにちはマスダです。

新しくファッションビジネスを始める人や、ファッションブランドを立ち上げたいという方の少しでも力になれればいいなと思い、ファッションビジネスを論理的に解説するシリーズ第19回【ファッションの科学 #018 スケールに向けて】の続きです。

ここまでの#001〜#006では「アイデアの検証」#007〜#010では「課題仮説の検証」#011では「前提条件を洗い出す」#012〜#013では「課題〜前提の検証」#014では「ユーザー実験の準備」#015〜#017では「最初の評価」「ピボットの実施」について話をしてきました、#018からは「スケールに向けて」についての話をしていたのですが、今回はその中から「LTV(生涯価値)の計測」について話していきたいと思います。

LTV(生涯価値)の計測

LTV(生涯価値)は様々な取り組みの結果を示す結果指標の一つです。

LTVを最大化する為には、LTVに影響を与える(インパクトがある)KPIは何かを考えて、施策を打たなければなりません。

インパクトがないKPIに着目して、いくら施策や改善を進めても、LTVが変わらないという事態になります。

そうなると、労力やリソースが無駄です。

ではまず、どうやってLTVを計算するかという事から考えてみましょう。

ちなみに前回のお話では小売として複合的な考え方で話したのですが、今回はECサイトのみという設定で考えています。

A:月間購入率

B:購入一回あたりの平均購入数

C:一人あたりの平均月間購入数(A×B)

D:購入一回あたりの平均売上高

E:一人あたりの平均月間売上高(C×D)

F:粗利率

G一人あたりの月間利益(E×F)

Σ(G):累積利益(LTV)

ECではLTV上昇のキードライバーとなるKPIは粗利率、購入回数、平均売上高の3つです。

洋服に関しては他品種と比べて、年間再購入率が高いので、カスタマーのロイヤリティー向上をKPIとして、引き上げるための施策に力を入れるといいでしょう。

顧客を定着させてLTVを改善

ユニットエコノミクスを健全な状態に変えるには、既存顧客の定着率を高めてLTVをどれだけ伸ばせるかがポイントになります。

なぜなら新規客を集めるためのCPA(顧客獲得コスト)は既存顧客を維持するコストの5,6倍かかると言われています。

そういったコストを考慮すると、新規顧客に対する利益率が5〜20%の場合でも、既存顧客に対する利益率は60%〜70%にも達します。

LTVの改善に既存顧客の定着が必須という事がお分かりいただけることでしょう。

ですので、既存顧客のロイヤリティーを高め、自社ブランドに定着させる為に、新規顧客が商品に熱狂する顧客へとどう育てていくかを念頭に施策を組んでいく必要があります。

お得な商品でまずは捕まえる

インターネットで買い物をするとなれば、大概の人が様々なサービスの中から比較検討を行います。

そのように、あっちのサイトにいって、こっちのサイトにもいってとされているといつまでもユーザーは定着しないどころか、コンバージョンすらあがりません。

そこで、どんな人が見てもコストパフォーマンスに優れているとわかるくらいお得な商品(WOW体験)を売り出すのも一つの手です。

お買い得感が圧倒的だと、そのほかの検討要素なんか忘れて反射的に注文してもらえる可能性が飛躍的にあがります。

またその商品に限ってはコストパフォーマンスに優れている為、満足度も高い状態で拡散する事ができます。

たとえその商品で利益がでないとしても、初回の購買には繋がり、CPA(顧客獲得コスト)としてはそれほど悪く無いでしょうし、その後のLTVの向上に向けた取り組みにもつながります。

熱狂顧客を作り出す。

熱狂顧客を作り出すためにはカスタマーが商品への愛着を深める毎にどの様な心理状態なのかを知っておく必要があります。

これらを把握しておかないと、初回購入をしたカスタマーを一段上のステージに引き上げて、自社に対する愛着がより強い顧客に育てるための対策を立てれません。

参考までにステージごとのカスタマーの定義

熱狂顧客:商品に完全に心を奪われている人。商品が作られる背景、ブランドに纏わるあらゆる事にまで賛同していて、商品を広めるエバンジェリストになっている。

忠誠顧客:かなり高頻度に商品を購入してくれる人。さらに様々な面から価値の提案ができれば、エバンジェリストになる可能性がある。

定着顧客:定期的に商品を購入する人。商品を使ってみて、自身の期待レベルを超えていると感じている。再購入が続くともっと熱狂度は高まりそう

再訪問顧客:以前に一度だけ購入して、次に何を買うかを検討している人。商品については概ね満足はしているが、期待を超えてくるというほどではないため、さらなる価値提案が必要

初回購入客:初めて商品を買った人。まだ商品に対しての印象も固まっておらず、再利用しない可能性が最も高い。

顧客全体をひとかたまりに考えていると、顧客定着に向けての対策は取れません。

商品やブランドに対しての愛着の高さで顧客をステージ分類してみると、一段上のステージに引き上げるための施策はなんなのか?を具体的に考えやすくなります。

それぞれの顧客の心理にうまく応えることで、愛着度を高めて、LTVの向上を実現しましょう。

定着率が低い理由を分析する

カスタマーの満足度を高めて定着率を向上するには、商品に対するネガティブな見方がなぜ生まれるのかも分析しておかなければなりません。

ECサイトであれば、カスタマー情報はあるので、それぞれのステージに応じてアンケートなどを用いてヒアリングする機会を設けるなど、「なぜ購入しなかったのか」「なぜ定着しなかったのか」といった点を情報収集するといいです。

その際に各ステージのユーザーに次の様なアンケートだと、LTV向上のきっかけとなることでしょう

■再購入していないカスタマーへ

・なぜ初回購入したのか

・なぜ再購入しないのか

・購入前の段階での期待と実際に購入した後にズレはあったか

・商品の説明にわかりにくいところはあったか

・再購入を検討するにはどういった事項が欲しいか

・購入までのプロセスにわかりにくいところはあったか

■サイトを再訪問したけど、購入しなかった人には

・なぜサイトを再訪問したか

・なぜサイトを再訪問して購入しなかったのか

・どういった商品があれば商品を購入したか

・なぜその様な商品に価値を感じるのか

■定着顧客には

・なぜ定期的にサイト訪問しているのか

・さらにサイト訪問の頻度を上げるにはどういった要素があればいいのか

・商品を親しい人に勧めたいか否か、またその理由は

カギはカスタマーの半歩先を

実際にカスタマーの多くは自分が欲しいものというのを正確には把握していません。

潜在的な課題についても、そう言われればという程度で、それほど気には止めていない事が多いです。

そういったカスタマー自身が気づいていないニーズを先に見つけて、提案してあげる事が事業の目標です。

世の中で売れているファッションブランドの多くは、それを実現しているブランドです。

今回挙げた様な、カスタマーの分析とともに、カスタマーの次のイシューや欲望を他の誰よりも深く考え抜き、期待を超えるものを継続的に提供し続ける事がLTVの改善に寄与することは間違い無いのです。

そしてそれが後の事業のスケールへと寄与していきます。

事業において絶対はありませんが、ここまでに綴った数々を実践することで、少しでも失敗の可能性を軽減する事が出来ます。

この記事がファッションビジネスを目指す全ての方の助力となると幸いです。

終わり。