ファッションの科学 #017 ピボットの実施

こんにちはマスダです。

新しくファッションビジネスを始める人や、ファッションブランドを立ち上げたいという方の少しでも力になれればいいなと思い、ファッションビジネスを論理的に解説するシリーズ第17回【ファッションの科学 #016 KPIの分析】の続きです。

ここまでの#001〜#006では「アイデアの検証」#007〜#010では「課題仮説の検証」#011では「前提条件を洗い出す」#012〜#013では「課題〜前提の検証」#014では「ユーザー実験の準備」#015〜#016では「最初の評価」について話をしてきました、今回からは「ピボットの実施」について話していきたいと思います。

ピボットをするか否か

ここまでに市場に商品を投入しはじめて、定量的にも定性的にも結果を検証してきました。

ユーザーのフィードバックをベースにスプリント(検証)を繰り返し、商品の機能改善を行なっている事だと思います。

それにも関わらず、うまく市場にフィットさせる事が出来ていない場合には、ファッションブランドとしてピボットを検討するタイミングかもしれません。

ピボットについての詳細はこちら【ファッションの科学 #008 ピボットは逃げではない。

苦しい状況のまま辛抱して、同じ課題、同じユーザーセグメント、同じ商品で展開し続けることもできるかもしれませんが、カスタマーが定着しない様であれば、思い切ってピボットすることも選択肢の一つです。

検証を繰り返して学んだ結果として、ピボットすることが最善であると判断するのであれば、躊躇せずに行うべきです。

決断が遅くなれば遅くなるほど、それ以上得るものが無い状態で浪費し続ける結果となります。

とはいえピボットすることは簡単な事ではなく、お金も労力もかかります。

そのタイミングをしっかりと見極めての判断が必要です。

ピボットは痛みを伴う

あらためて「ピボット」とは軌道修正の意味です。

ここまでに築きあげたものを少なからず捨てなければいけない事もでてきます。

せっかく定着したカスタマーを手放してしまう事もあるかもしれません。

それにいくら定量的に、定性的に様々な角度から分析してきたとしても、その全てを検討しつくせる訳もありません。

限られた情報の中でも、主観的に判断して決断しなければならないことでしょう。

参考までに状況的な指標をあげるとすれば

●スプリントを回して、改善を行なっても定着率が上がらない

●定着していたとしてもターゲットとする市場でシェアを獲得できない

●投資に対してのリターンを生み出せる見通しが立たない。

上記の様な状況に陥ってる場合にはピボットを選択肢として検討を行うべきタイミングと言えます。

ピボットの種類

単純にピボットといっても、やみくもに行なっても意味はありません。

どこをどの様に軌道修正するかによっても必要な資金やリソース、事業に与えるインパクトが異なるります。

また軌道修正する箇所によっては、改めて事業を検討し直した場合の方がインパクトが小さい場合もあります。

ピボットの一例としては

●カスタマーの定着がしない(リピート率が上がらない)

→想定顧客の見直し、想定課題の見直し

●コンバージョンが上がらない

→商品セグメントを絞る(好調な商品に集中させる)、商品セグメントを広げる(限定的だったなら、拡大する)

●チャネルによってばらつきがある

→販売チャネルのスクラップビルト

といった事が挙げられます。

最も影響が大きいのは想定顧客、想定課題の変更です。

対象の顧客が変わるということはもう一度事業を検討し直すところまで戻ってしまいます。

一方で商品セグメントを追加・削除することや販売チャネルを変更することは顧客の部分まで変更する必要はありません。

よくこのあたりを整理できずに変更しなくてもいいところまで変更してしまって、チグハグになってしまっているピボットやリブランディングの例も見かけるので、ピボットを行う際は慎重に見極めるようにしましょう。

最悪なピボットの例

企画力・生産力不足でのピボット

確実にマーケットフィットを確信している状態で商品イメージもある状態で、企画力不足や生産力不足でアイデアを諦めるパターン。

それが現実的なアイデアであるならば、自分たちのリソースが足りないことを理由にピボットしてしまうのはあまりにももったいないし、そこを貫けない様であれば、その先軌道修正したところで行きつまります。

カスタマーの声を聞かずにピボット

有識者やコンサルタント、経営陣、投資家といった人たちの意向でカスタマーの声を聞かずにピボットするパターン

これではカスタマーの為の商品じゃなく、作り手側のマスタベーション的な商品でしかありません。

その様な感覚ではたとえピボットをしてもカスタマーが欲しがる商品なんて作れるわけがありません。

検証結果に基づかない主観的なだけのピボット

「なにか違う」「もっといい方法を思いついた」といった感覚だけにたよったパターン。

いずれも定性的・定量的な学びがなく、ピボットをする正当な理由もありません。

主観を100%排除することはできませんし、前述した様に最終的には主観で決めなければなりません。

ただ、一人でやる分には自己責任ですが、最後まで定量的に定性的にこだわった上では無いと周りは納得しません。

やりきっていないピボット

前項と近しいですが、検証・改善といった事を商品に反映させず、磨き込みをしっかりとやらずに、すぐに諦めてピボットしてしまうケース。

大胆な戦略やスピード感といった事はもちろん重要な部分ですが、結局は諦めずにやりきる事が一番大事です。

じっくりと粘り検証を続け、必要な情報を吸収し続けずに、コロコロといろんな事に手を出しても結果的に何をしたいのかわからなかったという事になってしまいます。

燃え尽きてしまう前に

ファッションブランドを作ることは自分の作品を誇示する事でも、技術をひけらかす事でもありません。

カスタマーと向き合い、愛される商品を作る事です。

粘りつよく改善して、商品の磨き込みをしてもカスタマーの欲しがるものが作れないのであれば、ピボットをしなければなりません。

しかしそれには資金もリソースも必要とします。

資金が枯渇(バーンアウト)してしまうまでの期間をランウェイと言います。

ランウェイと言うと、アパレルでは華やかなイメージを想起するかと思いますが、こちらのランウェイも必ず覚えておいてください。

このランウェイを消化してしまい、バーンアウトをしてしまうまでの速さを表しているのが「バーンレート」です。

自分たちのバーンレートを把握して、いつ資金がなくなるのか?それまでにあと何度軌道修正できるのか?

最低限ブランドを作る上では把握して運営を行なってください。

つづく。

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ファッションの科学 #018 スケールに向けて