こんにちはマスダです。
新しくファッションビジネスを始める人や、ファッションブランドを立ち上げたいって方の少しでも力になれればいいなと思い、ファッションビジネスを論理的に解説するシリーズ第12回【ファッションの科学 #011 ジャベリンボードで課題を洗い出す】の続きです。
ここまでの#001〜#006では「アイデアの検証」#007〜#010では「課題仮説の検証」#011では「前提条件を洗い出す」について話をしてきました、今回からは「課題〜前提の検証」について話していきたいと思います。
その中から今日は「エバンジェリストを見つける」という話です。
ファッションブランド構築には欠かせないエバンジェリスト
検証するべき前提条件が洗い出されて、言語化ができる様になれば、カスタマーと直接対話するフェーズへと入っていきます。
前回のジャベリンボードの「実験」にて抽出した仮説が正しいのかどうかを想定するカスタマーに直接確認していきます。
課題仮説の磨き込みなしに、カスタマー候補と話をすることは、無駄が多くなるので、注意してください。
とにかく先ずは製品を作って販売するところから始めるなんて声もありますが、本気でやっているのであればあるほど、リスクを最小限にするためにも検証は必要です。
仮に先に販売を開始してインタビューをするにしても、課題仮説がない状態ではまともな質問もできないですし、何が良くて何がダメなのか結局わからない場合がほとんどです。
ではカスタマーインタビューの相手はどう選定すればいいのか?そこにもコツがあります。
適当に知り合いの中からピックしてみたり、SNSでランダムに話しかけてもまともなインサイト(購買意欲の核心やツボ)は得れません。
ここでインタビューをしたいのは、新しく始めるファッションブランドの「エバンジェリスト」や「アーリーアダプター」であること、もしくはなり得る人が最も好ましいです。
難しければ、流行に敏感で自ら情報発信をする様な人は周りにいませんか?
常に新しいものに敏感に反応していて、こういうものが欲しい。こういうものはいらない。と言った様に批評をよくする様な人でもいいです。
別にプロでなくても、ファッションが好きで自分なりにこだわりがある様な人であれば構いません。
リーンキャンバス上の顧客セグメント(アーリーアダプタやエバンジェリスト)がその他の項目にも影響を与え、ビジネスモデルの構築に大きく左右していきます。
エバンジェリストは”伝道師”カスタマー
前述した様にインタビューをお願いできそうな人はいても、エバンジェリストカスタマーに該当する人はそれほど多くないかもしれません。
エバンジェリストとは、企業メッセージの伝道者で、セールスマンに近いニュアンスもありますが、製品やサービスを売るのではなく広報宣伝、PRをする役割に近く、更に中立の立場に立ってメリット、デメリット、効果、役割を解説し、広く世に伝えるための伝道者です
そんなエバンジェリストカスタマーを探す方法としては
・知り合いから紹介してもらう
・SNSで関連する単語を検索してみる
・フェイスブックページなどを探してみる
・セミナー・交流会なんかに参加する
・ユーザー会を募集してみる
という地道な作業が中心かもしれません。
とはいえ課題に応じての原体験をもった様な人たちに声を聞ける様なサービスも今はありますし、特定の分野を専門とするスポットコンサルタントもいるので、探してみてもいいかもしれません。
実際にインタビューするポイント
エバンジェリストカスタマーになり得る人や、専門分野に特化したコンサルタントにコンタクトすることができれば、実際にインタビューを行っていきます。
この際、座談会の様な形で複数人と対峙するよりは、本音を引き出すためにも1対1でのやりとりの方がいいです。
また以下の様なポイントにも注意してみましょう。
ポイント1 インタビュー相手の事をよく知る
質問を通して相手の事をしっかりと理解しなければなりません。
こんな質問をしてみてください。
・「現状の課題を解決するためにどういった洋服を着用していますか?」
・「そのお洋服の不満なポイントはどこですか?」
・「この課題を解決するなら、いくらくらいなら支払いますか?」
この質問だけでも相手の課題に対してどの程度考えているのかがわかるかと思います。
インタビュー相手が深く課題について考えている人だった場合、つまりエバンジェリストカスタマーになり得る人だった場合は、実際に完成後の製品を使ってくれないかお願いしてみましょう。
場合によっては、現物支給か報酬を支払ってアンバサダーになってもらってもいいかもしれません。
こうしたやり取りの中で課題仮説は磨きこまれていきます。
ポイント2 相手の方が詳しい前提で話を聞く
どうしても業界経験が長かったりすると、自分の方が知っているのではないかという気持ちになりますが、インタビューをする際には自分の方が無知という感覚で臨みましょう。
自分の持っている情報や想定は一旦忘れて、インタビュアーとして素朴な疑問をぶつけてみましょう。
そうする事で業界ならではの「慣習」や強力な「サプライヤー」の存在など本質的な状況や課題が見え隠れしてきます。
またその人の知識や技量なども見えてくることでしょう。
具体的には「教えを請う」「根掘り葉掘り聞く」「確認する」「話の中から質問する」という風に会話を広げていってみましょう。
ポイント3 非言語コミュニケーションにも注意する
インタビュー相手の受け答えから、相手がエバンジェリスト(もしくはアーリーアダプター)ではないとわかることがあります。
特にその課題に関して深く考えていなかったり、知識が不十分だったりする場合。
そうした人の場合、掘り下げていっても有益なインサイトを得ることが難しいです。
表情だったり、仕草だったり、態度だったり、発言だったり。
その人の発言以外の部分も注意深く観察するべきです。
ポイント4 インタビュー相手の話を鵜呑みにしない
インタビューをそのまま寄せ集めただけでは、多くの学びを得ることはできません。
たとえアーリーアダプタであってもカスタマーの声は表面的なことが多い上、人の話はすぐに飛ぶので、情報量が多すぎる場合があります。
例えば「値段が高い」といった声があったとしても、高いの基準が何なのか?を明確にしなくてはなりません。
「競合他社の商品と比べて高いのか?」「一般的な量販店の商品と比べて高いのか?」では意味合いが違います。
ただ単にインタビューをして文字起こししても潜在的な事が何なのかを見つけることは難しいです。
こうした部分はポイント2の「根ほり葉ほり聞く」事で解消できる部分ですので、気をつけましょう。
インタビューはあくまでも手段
インタビューをすることは必ずしも全て商品に反映させるわけではありません。
自らが欲しいものが何かということや、その商品がどういったもので、どのくらいの値段なのかを明らかにすることはカスタマーの仕事ではありません。
インタビューはあくまでも、課題はなんなのか?それを解決するものは何か?といった声を聞くための手段であって、カスタマーが本当に欲しいものを見つける仕事、具現化する仕事は、ファッションブランドをつくっているあなた自身です。
他の誰もまだ言語化、そして商品化できていないカスタマーが「欲しいもの」を見つけることは決して簡単ではないけれど、商品を作るブランド側がカスタマーの本当に欲しいものが何かを深く知っているからこそ、小さなブランドであっても大企業に対しての競合優位性につながるのです。
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つづく
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