こんにちはマスダです。
新しくファッションビジネスを始める人や、ファッションブランドを立ち上げたいって方の少しでも力になれればいいなと思い、ファッションビジネスを論理的に解説するシリーズ第9回【ファッションの科学 #008 ピボットは逃げではない。】の続きです。
ここまでに「課題」「課題の質」「タイミング」「全体像の把握」「SMBの強みと大企業のジレンマ」「アイテムを定めて展開する」「リーンキャンバスの作成」「ピボットは逃げではない」という話をしてきましたが、今回は「ペルソナの想定」という話です。
ペルソナを想定していく
ここまでの話で具体的なビジネスプランが設定できたとすれば、次は課題を検証する為に行う最初のステップとしてカスタマーのペルソナを想定していきましょう。
ペルソナとは、ここでの意味は想定したカスタマーのイメージを具現化するために「25歳 女性、都内在住 大手企業総合職」といった人物像のことです。
こうした具体像を設定し、どんな課題を抱えているのかを詳しく考えていきます。
リーンキャンバスの作成では課題を抱えるカスタマーセグメントについて記述しました。
そこをさらに深掘りするためにペルソナを用意し、その心情や行動に焦点を当てていきます。
ペルソナを想定する時はリアルな人物像を思い描くことが重要です。
消費者にむけて、本質を突いた課題を設定するには、誰(ターゲット)の何(抱えている課題)をどのように(どんな商品で)という問いを投げかける必要があります。
多くの場合、【誰の】という問いが抜けがちですが、【誰の】というユーザー像を具体的に落とし込めなければ、臨場感のある課題仮説は作れません。
具体的なペルソナ像の描き方
・年齢・名前・職業・性別・趣味・生活スタイル・現在の居住地、出身地など。
・普段はどのようなメディアやSNSから情報を集めているのか?最近の話題はなんなのか?
・日々の出来事にどういう印象を持ち、どういう性格なのか?
・行動の特徴は?ITやスマホに対してのリテラシーは?
・どういう仕事をしている?
一部項目が抜けてしまっていますが、上記のようなイメージです。
出てきた具体像とリーンキャンバス上に設定した様な課題を抱えているのか?抱えているのであれば、ペルソナの課題は考えているソリューションで解決できるのか?を確認していきます。
なお、ペルソナは一度定めたら終わりではなく、リーンキャンバスのループと同じ様に、実際のカスタマーからフィードバックを得られるたびに修正し、より具体的に臨場感があるものにしていかなければなりません。
ペルソナを想定する目的
ペルソナを作る目的としては、特定の人に刺さる商品を考えていくアプローチを取ることで、ファッションブランドによくありがちな【不特定多数に気に入られなければならない】という無駄な考えを拭い去るためです。
あらゆる人にそこそこ気に入られる商品よりも、ある特定の人に圧倒的に支持される商品を構築するほうが、長く自分たちの商品を愛用してもらえる可能性があります。
またそこそこ気に入られるというレベルの商品では、既存のファッションブランドの商品で既に満足されています。
そのため、圧倒的な支持を生み出すためにも、カスタマー像を定めることは必須で、ペルソナを想定する事はとても役にたちます。
またリーンキャンバスと同様、チーム内でイメージを可視化することで、目指している方向性を逐一説明する必要もなく、コミュニケーションコストも削減されます。
ペルソナを定めることで、課題仮説の検証スピードを上げることが出来ますし、逆に設定されていなければ、ターゲットが広すぎてその意見を取り入れればいいのかの検討がつかずに、検証がなかなか進まず、次のアクションに落とし込めなくなります。
ファッションブランドの立ち上げの初期段階では、多くの仮定が入るので、明確なイメージを描きにくいこともありますが、まずは「最も確からしいペルソナ」を想定することが重要です。
エンバシーマップで深掘りする
上の写真の様な、ペルソナ像をさらに深掘りしていく時に使えるのがエンバシーマップ(共感マップ)です。
これは対象となるペルソナの心理状態を深掘りする時に活用できるフレームワークです。
ペルソナの快適・不快を分類するような単純な枠組みではなく、ペルソナの心の機敏を細かく書き出していくものです。
これを作成する事で事業を行うメンバーが、対象となるペルソナに対してより強い共感を持つことが出来ます。
エンバシーマップにまとめる項目は6つです。
・【Think】何を考え、感じているか?どういったことを心配しているのか?何を望んでいるのか?
・【Hear】何を聞いているか?周囲の友人、職場の上司/同僚、フォローするインフルエンサー何を言っているのか?
・【See】何を見ているか?生活環境や交友関係は?市場をどう見ているのか?
・【Say】何を言い、行動しているのか?周囲に対する振る舞いは?
・【Pain】どんな痛みをかんじているのか?恐れ、障害、フラストレーション
・【Gain】もしくは【Wants】何を得たいのか?欲しいものはなんなのか?必要なもの、成功指標は何か?
こういった点を細かく想定し、ペルソナの置かれた状況を具体化していきます。
カスタマーは自分の意思でしか動かない
商品を提案するときに知らず知らずのうちにカスタマーに対して「これぐらいわかるだろう?」「これぐらいお金を使えるだろう」と行った様に、こちら都合で物事を考えてしまう場合があります。
しかし、現実は言われなければわからないし、可処分所得なんてそれほど多くもないです。
そういった文脈を理解しながら、商品説明を細かに記載したり、価格設定を見直したりと対象のペルソナとなる人物に対して向き合わなければなりません。
また勘違いしてはいけないのは、カスタマー視点から徹底的に商品を作り込むという事は、意匠をカスタマーの意向に合わせて制限するという事ではありません。
一方的に自分たちのやりたい事を押し付けるのではなく、カスタマーの声を聞き、より最適化していくという事です。
つづく