こんにちはマスダです。
新しくファッションビジネスを始める人や、ファッションブランドを立ち上げたいって方の少しでも力になれればいいなと思い、ファッションビジネスを論理的に解説するシリーズ第8回【ファッションの科学 #007 リーンキャンバスの作成】の続きです。
ここまでに「課題」「課題の質」「タイミング」「全体像の把握」「SMBの強みと大企業のジレンマ」「アイテムを定めて展開する」「リーンキャンバスの作成」の話をしてきましたが、今回は「ピボットの重要性」という話です。
ビジネスをピボットするということ
ピボットというのは【ビジョン】を変えずに、商品や戦略を変更することです。
ピボット(pivot)とは、本来「回転軸」を意味する英語で、転じて近年は企業経営における「方向転換」や「路線変更」を表す用語としてもよく使われます。
言葉の意味を理解せずとも、当初の戦略を変更しているファッションブランドも沢山あります。(李ブランディングなんて言葉とごっちゃになっていたりもしますが)
計画段階だけではなくても、たとえそれが最適なビジネスモデルだったとしても、健全な収支構造を構築する前に資金が尽きてしまっては元も子もなく事業は頓挫してしまいます。
そうなってしまう前にビジネスモデルの検証を繰り返して、場合によってはピボットをしてPMFを達成できるように事業を修正していかなければなりません。
ピボットする際は慎重に
事業をピボットすると言っても、簡単な事ではありません。
必要以上に恐れる必要は無いものの、簡単に考えても痛い目にあいます。
ピボットするという事は、ある意味で自分たちの今までの行いを否定することとも同然なので、当然複数のメンバーで行っている場合などには不満をもつ人間もいます。
かくいう私も、以前にそういった経験がありました。(当時は従業員側でしたので、不満を持つ方でしたが)
初期の段階では多くても10人程度の組織で構成されていることが多いです。
人数が少なければコミュニケーションが円滑に行くかと言えば必ずしもそうではないです。
小さなチームでもそれぞれのポジションも経験も思考方法も異なります。
そういう事からも初期の段階であるほど、ビジョンや戦略を共有しながら、「あぁでもない、こぉでもない」とそれこそ毎日議論をして、みんなが納得する形でビジネスでを進めていくことが重要です。
ピボットは事業推進していく上で、非常にインパクトのある行動なので、創業メンバー間の対話によって納得感の醸成が欠かせません。
またピボットは単なる軌道修正と理解される事がありますが、立ち上げたばかりのファッションブランドにとって軌道修正程度では済みません。
時間もお金も無い中で、自分たちの積み上げてきたものを捨てるぐらいの大胆な修正、つまりほとんど事業撤退と変わりません。
だからこそピボットする時はメンバー全員の力で乗り切る必要があります。
その為にも議論を繰り返し、各自がピボットの判断に納得感とオーナーシップ(自分自身の課題と主体的に捉える事)が持てるかが大事です。
ピボットしてはいけないもの
ピボットが重要とはいえ、変えてはいけないものが【ビジョン】です。
事業を計画する段階で、方向性を示すビジョンは後からピボットをしてはいけないという事を強く意識しておくべきです。
例えばビジョンを「手頃にスポーツにもオシャレを」と掲げたのであれば、そのビジョンを達成する為の事以外はその事業を続ける限りはやらないのです。
商品や戦略を見直す事はビジョンを達成させるための手段ですが、ビジョンを変えてしまうという事は、その事業自体が変わってしまいます。
そうなってしまっては単純にその事業が終了した事と同義です。
またビジョンさえブレなければ、事業がスケールしたとしても社員に迷いは生じにくいです。
立ち上がりからメンバー同士がそれぞれの思いをぶつけ合い、しっかり時間をかけてでもビジョンを作り、明文化しておく事が、同じ方向を向いた組織になりえる最善の方法です。
厳しい道のりだけど
商品を展開し始めても、PMFを達成するまでの道のりは正直かなり険しいです。
たとえローンチ直後はアーリーアダプターによって、多少なりとも売上が立ったとしても、限りがありますし、継続的な売上を確保していく事は想像を超える難しさです。
その中でもカスタマーが抱える課題の仮説を立て、直接カスタマーと話して課題について学び、カスタマーの本音を知るためにMVP(minimum viable product)だとしても出し続ける。
アパレルの粗利率というのはとても微々たる数字です。
その中でも、上記の様なトライアンドエラーを手元資金が尽きる前に繰り返し行わなければなりません。
その過程では、必死に考えて苦労して形にした商品であろうと、たとえ確信がなくても捨てなければならないこともあります。
自分が作りたいものを作り、自分の思い込みを正当化するデータだけを信用していては本当に市場に受け入れられるような商品は作れないです。
そんな時にピボットは逃げる事と考えず、自分たちの事業を最適化するための手段として勇気を持って行うことも大事ではないでしょうか。
つづく