こんにちはマスダです。
新しくファッションビジネスを始める人や、ファッションブランドを立ち上げたいって方の少しでも力になれればいいなと思い、ファッションビジネスを論理的に解説するシリーズ第7回【ファッションの科学 #006 アイテムを定めて展開する】の続きです。
ここまでに「課題」「課題の質」「タイミング」「全体像の把握」「SMBの強みと大企業のジレンマ」「アイテムを定めて展開する」の話をしてきましたが、今回は「リーンキャンバスの作成」という話です。
リーンキャンバスを作成しよう。
多くのファッションブランドでも投資を受ける為だったり、銀行から借入れを受ける為に体裁通り事業計画書を作ります。(そもそも作っていないブランドもよく見かけますが….)
一方で、事業計画書は作成するのにとても時間がかかりすぎます。
正直、立ち上がりのファッションブランドの計画なんてのはあくまでもたたき台にしかすぎませんし、ブレるという意味ではなく、よりカスタマーに対して最適化していくという意味で、確実に変わっていきます。
なので、そこに時間を使うのはただでさえ業務が多い中では無駄でしかないです。
事業を検討する初期の段階で最善と思える仮説をPlanAとしてまず簡潔にまとめ、その後にバージョンアップしていけばいいのです。
そこで使用したいのがリーンキャンバスと呼ばれるフレームワークです。
リーンキャンバスは『lean startup』の著者で起業家のEric Riesが提唱している無駄のないビジネスキャンバスのことです。
リーン(lean)は英語で「ムダがない」という意味。
リーンキャンバスは重要な項目であるカスタマー、課題、プロダクト(商品)にフォーカスできるように設計されていて、とても良く考えられているフレームワークです。
それに誰でもすぐに理解して短時間で書く事ができます。
とてもシンプルなので、内容を5分で理解でき、10分もあれば書けます。
事業計画書を作るのに何ヶ月も費やすなら、10分で書けるリーンキャンバスを仮説/検証の度に何百回と書き込む方がはるかに効果があります。
リーンキャンバスは上の画像の様に、順番で各項目を埋めていきます。
ホワイトボードなどに張り出しておけば、メンバー間でも目標を共有しやすいです。
リーンキャンバスの書き方
①課題(課題仮説)
想定している顧客に対して、解決すべき課題(課題仮説)の中から重要なものを3つ選びます。
この時点では、まだ実際に顧客と話す前なので、課題はたとえ原体験であってもあくまでも仮説であると考えておきましょう。
②顧客セグメント
顧客(カスタマー)は誰かを特定します。
顧客をセグメントする上で、アーリーアダプター(初期購入者)を狙えているかどうかが重要です。
アーリーアダプターとなり得る人は情報感度が高く、普段から抱えている課題に対して代替えできる商品を積極的に探している人です。
なので、最初に商品を販売した時に、ダメ出しを含めてフィードバックをもらうにはアーリーアダプターが最適かつ的確です。
こうしたカスタマーの多くは、商品さえ気に入れば、周囲の人に広めてくれるエバンジェリスト(企業宣伝をしてくれる)カスタマーにもなる可能性があります。
③独自の価値提案
課題に対して自社の商品で、どういった独自の価値を提供できるかを書きます。
ここで注意したいことは【①課題】と【②顧客セグメント】は課題検証を進めていく過程の中で書き換えられます。
最初の2つの【①課題】と【②顧客セグメント】すなわち【誰のどんな課題を解決するのか?】という要素はブランディングにおいても土台になるので、初期の段階で徹底的に検討を重ね、その上でどんな価値を提供できるのかを考えていきたいです。
④ソリューション(解決策)
課題の具体的な解決策のうち、上位3つを書きます。
立上げの初期段階では課題仮説が検証できていないので、詳細にまでこだわる必要もありませんので、現時点で提供できる解決策を書き出します。
⑤チャネル
ここでは顧客にリーチする経路を考えます。
といっても最初の頃はほとんどチャネルなどないでしょうから、自分がターゲティングしているカスタマーと、どうやって接点を増やすと直接意見を吸収することができるかを考えて記載するといいです。(SNSだったり、コミュニティーだったり、イベントだったり)
⑥収益の流れ
このブランドの収益モデルを書きます。
実際の初期段階ではECサイトなどを通じてのカスタマーへの購買しかないかと思います。
他にも客単価や利益目標などの指標を記載しておけばいいでしょう。
⑦コスト構造
顧客獲得コスト、流通コスト、人件費など、商品を販売するためにかかるコストを書き出します。それぞれに対しての考え方を追記しておいてもいいかもしれません。
⑧主要指標
ファッションブランドがPMFを達成するまでに計測しておくべき指標を書き出します。
実践していく戦略によっても変わってくる部分ではありますが、TAMに対してのシェア率や、リピート率、購買人数などが当てはまってくるのではないでしょうか。
⑨競合に対しての優位性
競合に対して、圧倒的な優位性を構築できるポイントがあるかどうかを書きます。
事業を検証しているフェーズではこの欄を埋めることは難しいので、埋めれないなら一旦空けておいてもいいかもしれません。
書き込む内容としては【専門家からの支持】【チームメンバーの強さ】【既存のカスタマーがいる】【インフルエンサー フォロワー〇〇人】などがあります。
初期段階ではあまり重要な項目ではないですが、PMFが確認できた後にビジネスをスケールしていく段階では、優位性の構築がフォーカスの一つになります。
本当にこの優位性でシェアを獲得していけるのか?(市場で戦えるのか?)とい風なイメージです。
深く考えすぎずにまずは書いてみる。
この順番にもちゃんと意味があって、①〜③の3つの項目と④〜⑨の6つの項目では少し性質が違います。
最初の3つの項目が少し変わるだけで、後の6つの項目がガラッと変わることもあります。
これらの3つの項目は商品が販売された後にも仮説検証を行う中で、継続的に変わっていって当然のものでもあります。
つまり、初期の段階では、④〜⑨の項目に関しては、曖昧なところは想定ベースで簡潔に書いていればいいです。
初期段階で重要なことはあくまでも【課題】と【顧客ターゲット】を深掘りしていくことです。
その後に、そこから自分たちが提供できる価値を固めれば、自ずと④〜⑨の項目を埋めていくことができます。
おまけ
某グローバルブランドのリーンキャンバスを参考までに添付しておきますね。(英訳したので、誤訳や、ちょっとニュアンスがカタい部分もありますが….。)
…..続く
▽詳しくリーンキャンバスについて知りたい方はこちら▽
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