ファッションの科学 #005 SMBの強みと大企業のジレンマ

こんにちはマスダです。

新しくファッションビジネスを始める人や、ファッションブランドを立ち上げたいって方の少しでも力になれればいいなと思い、ファッションビジネスを論理的に解説するシリーズ第5回【ファッションの科学 #004 全体像を把握するという事】の続きです。

ここまでに「課題」「課題の質」「タイミング」「全体像の把握」の話をしてきましたが、今回は「SMBの強みと大企業のジレンマ」という話です。

競争を避ける

ここまでで、だんだんとアイデアの検証が進み、事業が固まってきたのであれば次に考えたいのは、競合についてです。

今回の話では、競合他社の中でも事業規模について話していきたいと思います。

体力のないSMB(スモール/ミドルビジネス)が大企業と真っ向勝負をすることは当たり前ですが懸命な判断ではありません。

できるだけ競争を避け、大企業が重い腰を上げて動き出したときには、既に市場を独占しているようなスピード感で動く事がPMF達成の可能性を高める肝になります。

これまでの話と比べると、あまり時間をかける必要もないかもしれませんが、アイデアを検証する時点で「大企業が出来そうにもないことをやっているか?」という問いかけだけでもする事も大事です。

一度でも企業に所属した事がある方なら容易に想像できるかと思いますが、企業では一つの事象を処理する事に対して、いくつもの部署が関わってくる事が多々あります。

決してそれが悪いというわけではなく、組織性・生産性・効率性を高める為には当然のことでもあります。

ただその為に捨ててしまっている事が、意思決定の速さや柔軟な対応でもあるので、SMBが戦う為にはそこを突くことが有効ではないでしょうか。

大企業の性質を知る

もう少し掘り下げていって、大企業と呼ばれる様な企業の性質を把握していきます。

多くの大企業では持続的なイノベーションを得意とします。

ここで言う持続的なイノベーションとは、既に一定の母数になっている既存カスタマーに対して見放されないために、既存カスタマーが示す価値基準に沿って従来商品の改良を進めるという事です。

簡単な例で言えば、ユニクロのフリースが毎年改良されたり、カラーバリエーションを増やしたりしながら定番商品としてずっと提案され続けてる様なイメージです。

この際にフォーカスされていることは「顕在化されているニーズ」に対してより効率的な商品を提供するということです。

このような市場の場合、ここに同じ商品で参入しようと思うと様々なリソースをどれだけ配分できるか?そしてその中でどれだけシェアを奪えるかという戦いになってしまうので、人的にも財力的にも体力のある大企業が圧倒的に優位になります。

この不利な戦いをよく挑んでいるのが【デニム市場】ですね。

本当に多くのブランドが参入してくる領域ではありますが、【国産(岡山産)】【シルエットを追求】【履き心地を追求】といった様な顕在化されているニーズで勝負しようとしてもそれらは既に大企業が着手している課題であって、到底太刀打ちできる様な領域ではありません。

ここまででの事例でもわかる通り、大企業の強みは既存市場の既存顧客により良いものを提供する為に最適化されている組織体制やオペレーションです。

一方で既存のカスタマーもより多くの機能があり、より性能が高く、より安く、より良い商品を要求してきます。

とはいえ、顧客の求める性能ニーズというのは少しずつしか上昇しません。

日常的に意識している領域でもありませんし、生理的、物理的、金銭的にと様々な理由からニーズが急速に高まるなんてことはありません。

そうなると、提供するプロダクトがどこかのタイミングで顧客の求めるニーズを超えてしまう事になり、オーバースペックとなってしまっていたりもします。

SMBが狙うのは隙間であるべき

大企業の性質がわかったところで、ではSMBはどういう戦略を立てるべきか?

その一つが隙間を狙って、新しい価値を生み出すということです。

先ほどのデニム市場の例でいうと、【尾道デニムプロジェクト】なんかが秀逸なモデルではないでしょうか。

新品のデニムを漁師や農家など、様々な職業の住民がはき古して色落ちさせるて、味が出た1点もののデニムは、全国のファンを引きつけています。

既存のニーズというよりは趣味嗜好の強い方に向けてのアプローチではありますが、飽和状態のデニム市場の隙間をついた取り組みではないでしょうか。

他にも、【ALEXIA STAM】というブランドがあります。

水着が火が着き人気ブランドとなっているブランドですが、従来水着の市場では大手が独占状態にあり、そこにファッションブランドがファッション性の強いオリジナルブランドを出したり、韓国系のプチプラ水着を展開したりしながら健闘していた様な状況でした。

このブランドはそこに【ブラジリアンビキニ】というあまり聞きなれない種類の水着を提案しました。

ブラジリアン・ビキニとは、ブラジルが発祥のトップ、ボトムとも小さい布地で作られたビキニタイプの水着の事
マイクロ・ビキニの一つともいえるが、セクシーさを前面にだしたカットと、ビビットで鮮やかな色合いやプリント、ヒップラインを強調する傾向が強い。
カラフル極彩色も多く、南米の雰囲気を持ち、露出度の高いTバックデザインの物が多く見受けられる。

プロデューサー自身が人気番組に出演したりしながら、徐々に知名度を上げていった事も起因するでしょうが、この【ブラジリアンビキニ】が女性のフィットネスブームやトラベルブームなどと重なった事もあり、ブランド自体の人気に火が着きました。

このように寡占されていると思われている市場でもうまく隙間をつく事が出来ればSMBにとっても勝機は確実にあります。(世界的にスケールするかどうかは別の話ですが)

大企業のジレンマをつく

大半のビジネス競争ではリソースがものを言います。

しかし、リソースが多い事が絶対というわけでもなく、どうしてもリソースが多くなればなるほど、ミスに対しても敏感になります。

そうなるとミスをしない為に組織を最適化・合理化していく様になり、結果的に硬直化してしまいます。

過去の実績を否定する事ができなくなってしまい、「去年出した商品でももう十分」と頭ではわかっていても担当者たちは確実性を上げる為にまたリピートしてしまいます。

ましてや上場企業となると、さらにその傾向は強まります。

株主が求めるのは10年後の利益よりも目先の利益で、大規模な投資を伴う様な事業は短絡的な利益を毀損する為、それを許してもらうことは困難でしょう。

ここが大企業にとってのジレンマであり、所属している人たちでさえも頭ではわかっていても行動できない部分ではないでしょうか。

一方で、それがSMBにとっては隙間となり、勝機を見出せる要因となる数少ない強みにもなるので、競合他社との比較を行う際には意識しておきたい箇所です。

 

つづく

▽この話の続き▽

ファッションの科学 #006 アイテムを定めて展開する