こんにちはマスダです。
新しくファッションビジネスを始める人や、ファッションブランドを立ち上げたいって方の少しでも力になれればいいなと思い昨日から書き始めた【ファッションの科学 #001 課題(イシュー)から考えていこう。】の続きです。
課題の発見=スタート地点
前回のお話で、ファッションブランドを立ち上げる際には課題から検討するということ、そして課題質の重要性はご認識頂けたでしょうか。
とはいえ、課題の発見はあくまでもスタート地点にたったという事に過ぎず、大事なのはその課題を掘り下げていく事(解決策の追求)です。
課題の表面的な部分だけでなく、その課題に対しての最大のペイン(痛み)は何かを追求し、解決していかなければなりません。
そして、ここで大事な事は自分が課題の当事者であること、他者の抱えていた課題であっても深い共感を持っていなければ、本気でその課題に向き合う事はできません。
つまり商品やデザインのアイデアよりもビジネスに携わる人がどれだけ課題を自分ごととして捉えて、アイデアを具現化していくという、実行にこそ本当の価値があります。
ここ最近、急激に成長を遂げている、D2Cブランドの【ファクトリエ】も日本の工場を活性化させるという課題を持ち、創業社長自身が全国の工場を500施設以上訪ね、直接取引の交渉をして回ったそうです。
また現場を観察し対話することは、本人たちや外からは見えない潜在課題までを掘り起こし、より深い解決策へとつながっていきます。
第三者の課題は避ける
ここでいう第三者の課題とは、自分自身の原体験ではなかったり、深い部分で共感していなかったり、大して思い入れのない他人の課題のことです。
強い共感を持っていない課題は自分ごとに置き換えることができないし、原体験も無い分、検証がどうしても表面的になります。
例えば、女性が作る男性服や、男性が作る女性服にどこか違和感を感じる事はありませんか?
もちろん、ジェンダーを超えて成功を収めているブランドもたくさんありますが、多くのブランドが表面的に性別を形どったような商品になってしまっていて、セールスの面で成功しているブランドはほとんどありません。
この場合、男性と女性では洋服に対する課題が根本的に違う為、それぞれに十分な共感なくてしては、結果として課題の質を上げ、そこに寄り添ったデザインをすることができません。
それに自分自身がその課題に対し深く共感できなければ、説得力もないので、周囲からの共感も得られにくく、ビジネスとしてブーストし難いです。
自分ごとの課題には人も集まる
課題への強い共感、それを解決したいという思いはビジョン・ミッションといった形で翻訳されていきます。
企画し生産した商品を実際に販売開始するまでのフェーズにおいては、ビジョンやミッションは大事な自分たちの武器になります。
消費者や一緒に事業を推進してくれるメンバーは、ファッションブランドのビジネス感を語るあなたのビジョンやミッションに惹かれて集まってきます。
そんな時に「詳しくはわからないけど、あの課題を解決しようとしています」では全く共感を呼びません。
ただでさえ、新鋭ブランドにはデザイナーや営業など、人材が集まりにくいうえ、そのほかの企業と人材の取り合いとなった時に、まだ商品という形でアウトプットできていないフェーズでは、自分達のビジョンやミッション以外に武器はなく、そこで優位に立てなければ必ず負けてしまいます。
つまり、ビジョンやミッションが語れない人の下には魅力的な人材は集まらないし、たとえ集まったとしても事業にコミットメントしてもらうことが難しいです。
また、その様に寄せ集めた状態では、メンバーが向いている方向がバラバラになってしまうので、組織としてまずうまくいきません。
ファッションブランドの立ち上げは想像以上に地味で、しんどい作業が多いです。
最初に立てた仮説も計画も平気ですぐに覆ってしまうこともあります。
製品作成のリードタイムも長く、最初のうちは売掛ができないという事もザラにあります。
売上げが一円も立っていないその間も資金がどんどん減って行きます。
そうした状況でも、強いメンタルで前進して行かなければなりません。
いざ製品の販売を始めても、最初は多くの会社から相手にされず、取引を断られてと、ありえないぐらい凹むことが日常的にあります。
そこに強いビジョンやミッションと使命感があれば、その大きな支えになることでしょう。
アイデアはニッチな方がいい
ビジョンやミッションを掲げる事と同じく、アイデアに対しても考えて行きたいです。
このアイデアというものは他者からの共感性が高ければ高いほど、自身にもつながり不安も解消されます。
一方で、共感性の高いアイデアであればあるほど、ほかの誰かが思いつく場合もありえるし、その課題をカバーできる様な、汎用性の高いファッションブランドは既に市場に飽和しています。
ファッションブランドの多くはマーケットの趣味嗜好を細分化してターゲットを絞ると言う戦略をとっています。
そして大企業ではポートフォリオ戦略といった形で、それらの市場を埋めていくために多数のブランド開発を行なっています。
※このようにマーケットやターゲットを細分化し、それぞれに応じた事業開発を行い、企業全体としてのブランド価値を向上していくやり方です。
そうした中では、一見「どこに市場があるのか?」「どうやって儲けるのか?」といったマーケットにこそ、チャンスがあります。
ネガティブな意見が漏れるマーケットというのは逆に言えば、明確にマーケットが定義されていないといえます。
例としては、【ジェラートピケ】というブランドがあります。
このブランドはルームウェアというニッチな市場をベースに【おしゃれで楽な部屋着】【そのまま近くなら外出できる】といったいわゆるワンマイルウェアに対しての課題を解決することで、それまでにメジャーではなかった、ルームウェアというマーケットで圧倒的なシェアを獲得する事に成功しました。
人に共感してもらえないうちは、課題を言語化して説明することができず、人に伝えると言う事が困難です。
当然そういった状況であれば、その課題に目をつけている企業もまだ存在していないか、存在していてもごくわずかです。
一方で既に言語化されていて、一般的にも浸透していて広く認識されているような課題をターゲットにした場合は、妥当な代替案がある事も多いです。
また市場が顕在化されていると、他社の事業とカニバってしまう(競合してしまう)場合があり、その場合には、投資金額や人的/物的リソースの勝負、販売価格の勝負になってしまうので、そういった市場は避けることが賢明です。
だからこそ、あなたがそのアイデアを話した時に、相手がリアクションに困って戸惑う様な、世の中では未解決のままになっている課題を選び、それにフォーカスすることが新たにファッションブランドを展開していく上では生命線になります。
ニッチなアイデアが求められる理由
前回に記載した、ニッチなアイデアが求められる背景には、ITの進歩でマーケットのパラダイムシフト(価値観の変遷)が高速化している事に理由があります。
これだけ世の中の動きが速いと、後追いで動き出しても既に追いつかない場合があります。
だからこそ、マーケットのシェアを獲得するためには、誰よりも先にPMFを達成することが重要です。
もちろんここで考えるのは、既に誰かが実践済みのアイデアではなく、【新しいシェアを開拓するためのアイデア】です。
既存顧客の既存課題に対して既存のソリューションを提供して利益を確保している企業は現状維持に必死です。
しかし、先述した様にこれだけパラダイムシフトが高速化していると、変化に対応できない企業は市場を失って行きます。
現実に事業縮小に追い込まれた企業は山の様にあります。
つづく….。
▽この話の続きはこちら▽