こんにちはマスダです。
今日はちょっと映画の話。
公開された頃に見た映画ではあったのですが、昨日prime videoであったのを見つけて、見ていました。
「スローイングダウン ファストファッション」という映画で、昨年上映されたドキュメンタリー映画です。
公開された当初は、なんて素晴らしい映画なんだ!!ファッション業界は色々とけしからん!!みたいな気持ちになったのですが、改めて見るとまたちょっと違った感覚でした。
この映画はナビゲーターとして、イギリスのロックバンド「Blur(ブラー)」のアレックス・ジェイムスが、ファストファッションを取材するジャーナリスト、ファッション関係者、ファストファッションの経営者へのインタビューなどを通じてファストファッションの現状を明らかにしていくっていうストーリーです。
様々な問題が取り上げられていく中で、大筋では納得出来るものの、少し違和感に感じる部分もあります。
最近取り上げられがちなエシカルとかサスティナビリティなんかに関した話です。
羊毛へのアピール感が強い
映画のレビューなんかでも良く言われているのですが、この映画はイギリスの映画で、中世から近代直前までのイングランドの主要な輸出産業は羊毛と毛織物だったものの、近代以降衰退していき、それがファストファッションに流れたという観点から、消費者の関心を取り戻そうという様な意図を感じます。
「ワンシーズンしか着ない服を買うのはやめよう」という主張自体は僕自身も思うのですが、それが必ずしもファストファッションにだけ向けられるものなのかってのが違和感。
また英国のチャールズ皇太子がパトロンを務めるキャンペーン フォー ウールの協力で制作されたということもあってか、なんだか羊毛に対しての戦略的な感じが全面に出過ぎちゃってる気がします。
羊毛は優れた素材かもしれませんが、幾つかの欠点があることも事実なのに、そこらへんがスコーンって抜けてます。
「鉱業、酪農業の次にファッション業界が環境に悪い」と話すシーンがあるんですけど、そこだけ見ると羊毛は酪農とファッション、二つの面を持っているから余計に悪いじゃんって思いますが、その辺はスルーです。
綿花栽培の際に使用される水量などの事も言ってるのですが、羊毛を洗浄、染色する際にも大量の水を使用します。
それにこの映画では紹介されていないのですが、羊を飼育する際に発生する大量のメタンは地球温暖化の要因の一つと言われていたりもします。
他の素材についてのデメリットがやたらと語られるんですが、羊毛についてはメリットだけしか語られていない事になんだか違和感を感じます。
産業保護よりも途上国からの搾取のが問題じゃない?
ファストファッションによる途上国からの様々な面での搾取については、実際に発生している事実で、この映画でも指摘されています。
指摘としては正しいのかもしれませんが、なんだか国内産業保護の観点が全面にきてる感が否めませんでした。
この問題だけで言えば、国内産業の保護の話が中心にきていたのですが、それよりもフェアトレードの仕組みを構築される事の方が大事だし、ドキュメンタリーであればそちらにフォーカスされる方が自然なんじゃないかなと思いました。
ファッションは労働依存度がもっとも高い産業と言われていて、世界的にも貧しい労働者たちが衣服の生産に従事しており、その多くが女性または高齢者・子供たちです。
その方達の多くが最低限の生活賃金以下の賃金で、危険な労働環境で、基本的な人権さえない状況で働いています。
2013年に起きたバングラディッシュの事件はまだ記憶に新しいですね。
あくまで個人的な意見にはなりますが、途上国の労働者に正統な報酬が支払われる(安全・環境コストも含めて)、それらのコストが正しく価格に反映されるようになるということの方が、この問題の着地点としては良いような気がします。
ちなみにフェアトレードの事についてはイノウエブラザーズの本がすごく詳しく書かれていて、面白いので是非そっちも読んで見てください。
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ゴミ問題は現実に酷い。
紹介する順序が逆になっちゃってる感があるんですが、ナレーターのアレックスがゴミの埋め立て地を訪問するシーンがあります。
そこを訪問した際に、石油などに由来する化学繊維の洋服の多くが、土に還らずそのまま残されている様子に愕然とし、拡大し続けるファストファッションをスローイング・ダウン(減速)出来ないかと動いていきます。
映画とは違いますが、以前にヴェトモンがファッション業界の過剰生産問題に対するアンチテーゼとして、instagramに投稿されたディスプレイ写真に加えてテキストで
”ほとんどのブランドがゴミを作っています。
在庫の山がアウトレットや倉庫に積み重なり、誰にも購入されないことが多い。
偽りの数字を追いかけ、安定した成長の報告の為に、この業界は過剰生産という問題から目をそらしています。
Saksはこの問題について話合う機会をこのメインウィンドウを通して提供してくれました。
私たちは少ないことが豊かになる場合もあるということに気付く必要があります。”
と記載し投稿しました。
こうした事もあるように、業界としての構造は未だ消費主義に傾いている様に感じる中で、このシーンでの問題提起は丁寧に表現されていた様に感じました。
最後に
ちょっと否定的な意見も続いてしまったのですが、全体的にはファッション産業の事を知るにはいい映画なんじゃないかなっと思います。
個人的にすごく面白いのは、様々な専門家や識者、事業主などに話を聞いていくところです。
川上、川中、川下の業者はもちろん、ラグジュアリーブランドからボリュームブランド、リユースショップなんかにも話を聞いていて、日本とはまた生産背景も商環境も違うのも面白いし、違うと言っても何かヒントになりそうな感じはあります。
ただ全体的にはファストファッション=悪っぽい感じに描かれているのが引っかかったかな。
是非、ファッション業界に関わる人たちには一度は見てほしいなって思います。
それではまた!!