今日は久しぶりにアパレルネタを書こうと思います。
先日、大手百貨店の方と話をしていたのですが、インバウンドの沸騰や先般の株価の高騰でラグジュアリーブランドの売上げがバブル期を超える勢いで増えているそうです。
今めっちゃ売れてます。
実際にラグジュアリーグッズやラグジュアリープレタポルテは売上伸び率も販売効率も飛び抜けて高いそうです。
景気の浮揚で消費も回復しているとはいえ、17年冬商戦(11〜1月)では全国百貨店売上前年比が100.1、同紳士服が100.8、婦人服が98.1と伸び悩んだり、前年を死守するのが必死だったなか、ラグジュアリーグッズは116.6%、ラグジュアリープレタも110.8%と絶好調です。
ファッション関連カテゴリーでは断トツの一位と二位です。
ここで言うラグジュアリーグッズというのは、エルメス、カルティエ、ショーメ、ブルガリ、ダミアーニ、ゴヤールなど
ラグジュアリープレタでブルネロクチネリ、アクリス、バレンシアガ、ヴェルサーチなど、
それぞれで130%を超える“絶好調なブランドもあります。
これらのブランドは伸び率もともかく販売坪効率も突出しています。
都心百貨店の平均とはいえ、ラグジュアリーグッズは宝飾品も含むため月坪効率は230万円超、ラグジュアリープレタは120万円超とファッションビルなんかでは50万円行けば素晴らしいとも言われる、ファッション関連では飛び抜けた数字ですね。
なかにはエルメスやカルティエなど400万円を超えてるブランドもあって、プレミアムダウン人気で売上げが急増したモンクレールも400万円に近い坪効率だそうです。
そんなに混雑しているようには見えなくても、1点単価と客単価が高いのが要因なんでしょうね。
浮き沈みが激しいラグジュアリーブランド
そんな絶好調のラグジュアリーブランドですが、景気やインバウンドの動向で売上げが割と左右されます。
今の絶好調は17年夏期頃からで、16年冬期から17年春期にかけて浮上し、ラグジュアリーグッズは17年夏期から、ラグジュアリープレタは17年秋期から2桁増に加速していきました。
ただそれも株価や景気、為替や中国の政策などでいつ、変調するかわかりません。
それ以外にも、2桁増が当たり前の中で2桁減に沈むブランドもあるし、前年割れのブランドも少なくないです。
前年、前々年に人気が沸騰した反動で落ち込むケースも目に付きます。
コレクションの評判やセレブの御用達などで火が付くと30〜60%も急伸する一方、ブームが去れば見るも無残な状態になります。
不動の地位を確立したエルメスやヴィトンなどのビッグブランドや、顧客をつかんだプレタブランドを除けば、コレクションブランドではデザイナーの失策や交代で一気に落ち込むケースも多いです。
最近ではエディーが抜けたサンローランとかね。
人気でテナント家賃も大きく上下する
売り上げの浮き沈みは館(百貨店など商業施設)への出店条件に直結します。
ビッグブランドが百貨店に出る場合、百貨店側が坪200万円以上と言われる内装費を負担した上で歩合家賃は売上げの8%程度と聞きますが、人気が落ちたブランドは次回以降の内装費を自己負担した上で売り上げ歩合も20%以上も取られたりします。
僕も以前は頼むから出てくださいっと好条件で出店したのに、人気が落ちると早く場所空けてくれみたいなこと何度もありました。
館としては歩合が低くても坪販売効率が高ければ採算に合うし、ビッグブランドが揃っていることが、百貨店の格みたいなとこ正直ありますね。
同じ坪数でも月坪250万円なら8%でも20万円の家賃が入る一方、月坪50万円では20%でも10万円にしかならなかったりしますもんね。
ラグジュアリー市場はけっきょく儲かるのか?
先述のように人気の浮き沈みで大きく変わるのは出店条件だけじゃなくて、在庫の消化率や回転はもちろん、利益も売れたらでかい分、振り幅は大きいです。
販売不振で96.4%と失速したプラダは営業利益率も11.8%と落ち込んだが、人気急騰で14.7%売上げを伸ばしたモンクレールは営業利益率も28.6%、絶大なブランド価値を確立したエルメスは6.7%売上げを伸ばして34.6%もの営業利益率を稼いでいる。
ちなみにおおよそのアパレルが8%〜18%程度の利益率と考えると、凄まじい利益率です。
売上規模も世界に名だたるブランドだけに、プラダで3870億円、エルメスで7025億円、高級ブランドを多数参加におくLVMHは5兆4000億円のアパレルビジネスとしてはどでかいです。
ラグジュアリービジネスはグッズ系とプレタ系で、ものづくりも収益性も安定性も大きく変わります。
グッズ系は皮革製品から宝飾品まで自社企画・自社工場生産が鉄則で、主要部材・部品まで自社生産するブランドが多いですが、プレタ系では生産は外部工場へ委託するケースが多く、外部デザイナーと契約することもあります。
売上げの安定性も、毎シーズンのコレクションの出来に左右されるプレタ系より定番商品の蓄積が厚いグッズ系の方が格段に良くて、同じブランドのグッズ部門は2桁利益率でもプレタ部門は大赤字というケースも多いです。
実は原価率は化粧品や医薬品並みの安さ
ラグジュアリーブランドは原価率は各社とも明らかにしないが『化粧品並み』(パッケージ代込みで15%〜20%)とも『医薬品並み』(10%以下だが別途の開発費がかさむ)とも言われています。
これも一般的なアパレルが20%〜30%、高いところでは40%近くまでかかっているところをみればかなり安いです。
結果の売上対比粗利益率を見ても低くて65%強、高いとエルメスやモンクレール、プラダのように70%を超えていると、生産原価率は20%未満であることは間違いないと思います。
計画通り売れれば売上対比30〜40%の営業利益が得られます。
アウトレットで見切ったり、処分業社に横流せばブランド価値の毀損は避けられず、以前までは焼却処分するブランドも多かった。
最近ではグッズ系の定番は次シーズンに持ち越しても、トレンドが変わるプレタ系は期中の処分が必至で、期末のシークレットセールやファミリーセールで処分しています。
こう言ってると、ラグジュアリーってメッチャ儲かるってなりがちですけど、ラグジュアリービジネスは商品開発やマーケティングに膨大な時間と投資がかかります。
利幅は確かに高いですが、そもそも物を高く売ると言う事はブランディングがめちゃくちゃ重要です。
資本にゆとりのある企業がじっくりと時間をかけて、成長させていくのがセオリーですが、ITが発達した現在なので、新しい取り組みが出てくるかもしれないですね。
ただ隣の芝生は青く見えても経営の実情はそれなりに厳しいので、安易に手を出すのはやめといた方がいいです。
それではまた!!